いつか月を歩こう

自分大好きなオタクが自分語りする

私と母と下着選び

「この人尻がでかいんです。」

 

 もう何回聞いたであろうこのセリフを母は今日も店員にそう言った。店員はいやっそんなことないと思いますよと私を見ながら言った。この人とは私のことである。

 

 服屋や下着屋に行き、試着した後や服を手に取って見ているときに話しかけてくる店員に一緒にいる母が必ず言うセリフ第1位である。ちなみに第2位は「この人腹が出てるんです」、第3位は「この人太ももがすごくて」である。

 母は母なりに私のためを思い(今後着れるサイズなのか、尻や足の太さが目立たないかなど)言ってくれているのだと思うが言われるたびに誠に遺憾な気持ちになる。

 確かに私はデブである。そこはもう否定しない。普段腹を引っ込めてあたかも「ちょいぽちゃです〜」みたいな態度でいるが多分隠せてない。しかし見てわかるのに改めて言われるとやっぱり恥ずかしいと一丁前に思ってしまうのだ。

 

 今日もそういった出来事があったのだ。しかし今日はいつもとちょっと違った。例によって母と買い物中、下着屋に寄り試着し購入することになった。「ブラトップとノンワイヤーブラでええやん。ユニクロの。」

試着中そう言ってくる母は可愛い下着には興味がなかった。しかし私にはある。母が買ってくる下着(私が何も言っていないにも関わらずいつも買ってくる)のブラトップやスロギーを着用し続けてきたが、こういったノンワイヤー系をずっとつけていると乳が垂れると聞き、自分の乳を見て危機感を抱いていたためワイヤー系のブラを購入するべく一緒に買い物していた母を連れてきた。

 試着を済ませると、母と店員が私を待っていた。

「セットのショーツはこちらになります」

そう言い店員は試着したブラと同じ色のショーツを持ってきた。

「サイズはMとLがございますが」

そう店員が言った瞬間、母は冒頭の台詞を言い放ったのだった。

「この人、尻がデカイんです。」

始まった。私はそう思った。

「いやっそんなことないと思いますよ!」

優しい店員さんのハキハキとした声が店内に響き渡り、通りすがりのおばさんが私の尻をチラッと見ながらレジへ向かっていくのが見えた。

「もうやめてよお母さん、恥ずいから…」

母の腕を叩きまるで母と娘の定番のやりとりってだけでふざけてるだけなんです〜っていう空気にしようと試みるが母は止まらない。

「いやマジでデカイんです。冗談とかじゃなくてホント大きくて、」

そう言いながら店員さんが持っていたLサイズのパンツを受け取りながら私の尻に当て、

「ほらちっさい!!!!!!!!!!!!!」

最悪である。実際に入るが尻が少しはみ出るんだろうなっていうサイズ感なのがさらに私に追い打ちをかけてきてもう笑うしかなかった。

「多少はみ出ても大丈夫なデザインですので大丈夫ですよ!」

優しい店員さんの優しい嘘が心に優しく爪を立てていく。なんだ尻がはみ出ても大丈夫なデザインって。

 

あーそうなの?なんて言いながら母は私の選んだブラと、少し尻がはみ出るパンツをレジに持っていった。会計をしてもらい、ようやくこの地獄のような店内から抜け出せると思っていた瞬間母は口を開いた。

ユニクロのブラトップってあんまりよくないの?ほらノンワイヤーの」

急にそんなこと聞く?と思いながら私は店員さんから商品の入った袋を手に取る。

「そうですね、下着会社から出てるものでないとあまりといいますか、かなりよくないとは思います…凄く楽なんですけどあまり胸を支えていないので…」

店員さんは他社の下着についても丁寧に教えてくださった。最初から優しくて涙が出そうである。

「エーーーーー!!!!!!そうなの!?!?!?!?だから私の乳だるんだるんなんだ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

もう勘弁してくれ。店員さんも流石に堪えきれず大爆笑していた。私は天井を見上げていた。